私は1979年に筑波大学スポーツ科学系文部技官を振り出しに、筑波大学3年、福島大学35年、朝日大学4年、のべ42年にわたって大学教師人生を送ってきました。幸い健康にも恵まれ、一度として授業を休むことなく定年退職の日を迎えることができました。これもひとえに、多くの方々にご指導ご鞭撻をいただいたお陰と、心から感謝しております。そんな私が、大学教師としてたえず心がけてきたことが一つだけあります。それは少しでも「質の良い授業」を、学生たちに提供するというものでした。
また大学での専門分野が二つあるというのも、大学教師としてはきわめて異例のことだったと思います。一つは運動の技術を分析し、効果的な指導方法を研究する『スポーツ運動学』であり、もう一つはスポーツ選手の心の力を強化する方法を研究する『メンタルトレーニング』というものです。私は学生の頃からこの二つの領域について、すぐれた先生方から教えを受け、教師となってからも国際的なレベルで研究を続けてきました。その甲斐あって、30年以上にわたってさまざまな種目のトップアスリートやコーチたちを指導することができるようになりました(これまでの主な指導歴参照)。
トップアスリートといえども、いつも絶好調などということはありません。むしろ彼らの方が一般の方以上に、心・技・体の乱れに敏感で、実力を十分に発揮できないでいることが多いものなのです。私はこれまで、悩みを訴えてくる選手たちとは必ず直接面談し、選手自身では気づくことができなかった問題点を発見し、改善策をアドバイスするということを長く続けてきました。
私のこれまでの42年間は、大学での教育や研究などの公務が中心でした。トップアスリートへの「悩みよろず相談所」は、その公務の合間をぬっての活動でした。毎年、年100回ほど行ってきた全国各地での講演(学校、官公庁、企業)も、またのべ40冊にのぼる著書の執筆も、すべてはすき間の時間を使ってのことでした。
退職し時間的に余裕が出た後は、全国各地からのご要望に応じて講演に出向こうと思っておりました。しかし、2020年にコロナ禍が世界中を襲い、1年を経過しようとしている今も、いっこうに収束の目途は立っておりません。私も長い大学教員生活の中で、初めて「遠隔授業」という形式で講義せざるを得ませんでした。
予定されていた講演会も、昨年はほとんど中止となりました。しかし、いくつかの学校や企業から、「遠隔」で講演していただけないかというご依頼をいただきました。実際やってみると、「対面」よりも「遠隔」の方が、受講者の学びにとっては利点が多くあることに気づきました。「遠隔」で受講する場合、①交通費が不要、②移動時間が不要、③宿泊の手配や費用が不要、④自分のペースで何度でも学べるなどです。
今回、私が開校いたします「白石塾」では、4つの集中講座を教室での対面でも、また配信する動画を使ってご家庭でも学んでいただけるように企画しました。これまで半世紀近くにわたって培ってきた「私の学び」を、一人でも多くの方にお伝えできればと考えております。